クロアチアのブナの森~豊かな太陽と地形
海沿いの道から一般道路で内陸側へ。車窓から見える風景は、石灰岩の山肌と低木の緑。本当にブナの森があるのだろうか?と疑問が消えない。
港町リエカを出て、30分ぐらい走ったところで、キュッとハンドルを切って林道へ。すると急に周囲の風景が変化して、緑豊かな森が見え始め、まるで別世界のようである。ブナ、オーク、メープルなどがいっぱい生えている。
ブナの森が現れた。日本のブナ林を探索したときもそうだったが、まるで誰かが下草を刈ったのではと思うぐらい、森の地面は整然としている。ブナの葉の間からの木漏れ日で育つ植物がのみ育つ。
ここは、海抜1200m~1300mぐらい。冬(11月~4月)には、積雪が4~5mにもなると言う。
ブナの伐採は、幹の直径が40cm以上あるものを対象に、事前に木に印を入れて、計画的に行なわれる。また、ブナにかかわらず、オークやメープルなど、適度に間伐をすることで、森の成長を促している。間伐した木は、薪やチップにして紙の原材料となる。
ブナの実が地面に落ち、その種から芽がでてきた。あのブナの大木も最初はこんなに小さい。当たり前なのだが、信じられない気がする。芽の周囲には、ブナの実がたくさん転がっている。ネズミや他の草食性動物が食べる。
森の更新には、自然蘇生や植林などの方法があるが、クロアチアの場合は、自然蘇生である。計画的に、残す木、切る木を決め、伐採を実行する。伐採した周囲は、再び日光が溢れて、そこから新しい芽が育つ。まさに、世代交代がスムーズに進行するのである。
クロアチアに広葉樹の森が広がり、適切に管理され、ブナやメープルなどの木自体が自然蘇生しながら、豊かな森を育てているのに感銘を受けた。
ちなみに、クロアチアの伐採量(製材量)は、1年間に、ブナ(80万㎥)、オーク(47万㎥)、モミ(35万㎥)、アッシュ(22万㎥)程度に上っている。
ヨーロッパのブナ材の1年間の供給量(伐採量)は、ドイツ1000万㎥で、ダントツで1位。2位ルーマニア、3位フランス。その他、ポーランド、デンマーク、ベルギー、ブルガリア、ボスニア、マケドニアなどの産出国がある。
ずっと続くブナの森の林道。案内人のM君から少し気になることを聞いた。「昔のブナはもっと良かった。」と。加工材料としてのブナのことである。
地球温暖化などの気候の変化、そして、伐採作業には馬が活躍した時代もあったが、現在はトラクターなので、他の木を損傷してしまうことが多い。そう言った自然環境や人間の経済ペースの急激な変化と無関係であることはありえない。
とは言うものの、最後にM君が言った。「クロアチアでは、ブナの木は、伐採する体積よりも年々成長していく体積の方が、上回っている。安定的な供給ができますよ」と。
木材輸出をしているM君の単なるセールス・トークではないと信ずるが、実際に、クロアチアの太陽と土地の豊かな恵みが、ブナの森を成長させていることは間違いない。
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Comments
クロアチアもモミの木はたくさんありました。
移動中は、「これはモミだ」「いや、スプルースだ」と言いながら、車に乗っていました。それぐらいたくさんありました。私もモミの木が身近になりました。(^_^)
Posted by: koh | August 15, 2008 08:55 AM
クロアチアに行かれたのですね。
西に隣接しているスロベニアには、4,5年前に樅の木を検品に行きました。その際には、ドイツから1泊で行きました。
クロアチアにも当然樅の木があるのですね。勉強になります。ご帰国されたら、また、お教え下さい。
美味しい料理や、ワインも楽しみのひとつですね。ご堪能下さい。
Posted by: H.MAEDA | August 11, 2008 02:32 PM