「忍び寄る食と命の危機 −但馬の農と暮らしをどうする−」但馬学研究会公開講座
但馬学公開講座を開催した。実はこの日の朝は8時前の新幹線に乗るためにまだ東京にいた。時間がないので、たまには良いかと私としてはめずらしく「ホットドッグ」をスタンドで食べた。驚くことにマヨネーズがタップリとかかっている。マスタードとケチャップだと思っていたのに、かぶりつくと口の周りがマヨネーズだらけになる。(>_<)
話は前後しましたが、今回の但馬学は公開講座。できれば年に1回程度は地域の人達と一緒に勉強をしようと考えている。今年の年間テーマ「但馬の食」に沿って、保田茂先生(神戸大学名誉教授、兵庫農村社会研究所代表)にお願いした。タイトルは「忍び寄る食と命の危機−但馬の農と暮らしをどうする−」と言う、まことにタイムリーな話題である。
結論としては、「日本の食文化は米。もっとご飯を食べましょう。」なのです。日本の農業が抱えている問題、食料の流通の問題、日本文化(特に食文化)を大切にすること、健康問題、環境問題へと議論は広がる。
しまった!午後は保田先生のお話なんだから、朝はやはりご飯を食べるべきだったと後悔。(笑)しかし、言い訳がましいが、東京にもよく出掛け、食事をする機会が多いのだが、「米を食べる、日本文化を意識する」からは、ほど遠い風景を目にすることになる。
今日のお話の感想としては「結論は分かる。しかし、国民みんなが意識してこの危機をどのように解決して行くのかは、分からない(分かっていてもどうやってやったらいいのか?)」
ただしその糸口は結局は、「自分自身、そして家族」の意識改革から始めないといけないと言うことが理解できた。
保田先生のお話は、農業関連(食料自給率、農地面積etc)資料や日本人の食生活の変化、国民医療の実態をたくさんのデータに基づきながら、ユーモアたっぷりに分かりやすく進む。
保田先生の印象に残った講義語録を。
○中国からの冷凍食品「ギョウザ問題」は、北京オリンピックまでは日中平行線だろう。
○ギョウザのルーツは稲作のできない中国北部。麦文化。日本は稲作文化。
○食品の安全基準は胎児(細胞分裂が活発)を基準にして考える。(影響大)
○戦後、経済成長の過程で、好景気→豊か→「食料は1円でも安く」の価値観(量販店など流通変化)→人件費・土地高騰→輸入食品→食自給率の減少
○「1円でも安く」とは、流通変化と戦後教育(古き事=悪しき事、日本文化の崩壊)
○親の子に対する責任とは「安全に暮らせる知恵」と「飢えることのない知恵」
○昭和40年(1965)食料自給率(供給熱量ベース)73%から現在40%に低下。(毎年1%)
○主要50カ国で、日本より下位の自給率の国は、砂漠地帯、極地の国。
○日本の作物の種は80%が輸入。(日本の風土に育つDNAが不足。だから農薬頼り?)
○平和りに食料を分配しながら、地球に暮らせる人口は80億人ぐらいではないか。
○現在60億人余り。あと約20年で80億人に到達
○今後の穀物国際価格の予測は、1994年を100として、あと20年で4倍(人口要因)、気象要因2倍、為替要因2倍。16倍になる可能性がある。
○カルシウムを摂るには、緑の菜っ葉(大根、カブラの葉)、豆、海藻
○インスリンは欧米人の半分。糖分の消化にハンディキャップ
○子供にもっと日本のおやつを。「干し芋、干し柿、かき餅」脂肪0、硬い(前歯を鍛える)
○歯を使わない食べ物は胃が弱る(現代人のおやつに多い)
○人間の血管を1本に繋いだら9万キロ。地球を2周とちょっと。
○サラサラの血液を保つのが大切
○子供達は学校や家から眺める風景を観ながら育つ→田んぼ(稲作文化、主食はお米)
保田先生の指摘は、どれも鋭く深い。本当に食と命の危機を感じた。もう「忍び寄る」どころか「日常的に目にする危機」であると思う。
お陰さまで、私の住んでいる但馬には山も川も海も田んぼもある。ただし、その自然を守っている人々が高齢化し、若者が流出し、徐々に荒れ果てて行きつつあるのが現実である。
但馬の美味しいものをいただいている生活者としては、生産者への感謝(関心を持つ)ことと消費者(私たち)が、もっと食について関心を持つことが大切なんだろう。つまり、加工食品ではなくもっと料理をし、地元産の食材を楽しむこと、その味覚を子供達や周辺の人達に伝達して行くこと。それが、ふるさと(但馬)を誇りに思い、日本の文化を継承して行くことになるのではないか。
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