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January 22, 2008

「漆」を学びに山中漆器の里へ(加賀市)

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漆塗りの産地で有名なのは、なんと言っても石川県。石川県には三つの漆塗りの産地がある。一つは、ろくろを使った高度な挽き物の技術で有名な山中漆器。二つ目は、国の重要無形文化財の指定を受ける堅牢を旨とする輪島塗。そして、雅やかな装飾が施される金沢漆器。

私は漆を学ぶために加賀市山中町へやってきた。あの有名な北陸の山中温泉である。街を囲む山の斜面から撮った山中温泉街。文字通り、山の中なのだ。

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私にとって漆器は、お正月のお節やお神酒をいただく時、その他に普段使いの器が少しある。ただ、「漆塗り」の知識、良し悪しの鑑識眼、特徴、産地のこと、など知らないことばかり。

山中のK氏のご案内で、漆の工程を見学させていただいた。

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木地師、中出氏。ろくろを回しながらお鉢を削っている。このように、1個1個、手の感覚で鉋を操作する。山中は、卓越した挽きもの技術が特徴。

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ろくろを就業中の若い職人。故郷を離れ、この山中へ修行に来ているという。

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これが漆の原液。乳白色なのだ。空気に触れると茶褐色に変色していくので、容器の漆には紙のようなものでふさいである。漆の材料は、主に中国産。最近では、国産の漆も見直されているが、極めて少ない量しか採取できず、文化庁管轄で、皇室を初め、国宝級の修復などに使用されているそうだ。

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下塗りの天王地氏。この道60年の職人。職場に一歩踏み入れると、ピーンと張り詰めた空気が漂う。正座して、しばらくその仕事を拝見する。下塗りの漆は、荒地、二辺地、三辺地、の3段階あり、漆と珪藻土の粒子を混ぜて作る。

仕上げの良し悪しは、その下地で決まると言うが、まさに、このT氏の技と心があって、最高の山中塗りがあるのだと実感する。年季の入った道具と、使いこなす技術、そしてそのお人柄に感動する。

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塗り師の清水氏。「伝統とは、時代、時代に新しい工夫を加えてこそ、より良き伝統技術となる」と言う言葉印象に残った。

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「拭き塗り」をされている田中夫妻。木地師によって挽かれたお椀を1個1個、丁寧に塗り込まれ行く。その手先の動きに無駄がない。

今回の成果は、「漆器」そのものの工程を知り、学んだこともあるが、それ以上に、山中漆器に携わっていらっしゃる職人さん達の、技術と心意気。それぞれが、新たな工夫を加えながら、また新しい伝統を作りあげていかれるのだろう、と実感できたこと。モノづくりの奥義をまた一つ学んだ気がする。

もちろん、一番感謝しなければならないのは、漆の事前知識の乏しい私を案内してくださったKさん。(Kさんは、また近い将来、このブログでご紹介させていただく予定です。)

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