ヤブコウジ 鳥が運んで来た
ヤブコウジ(ヤブコウジ科)
小さい低木で、草のようだ。現代人は実を見て初めて認識しよう。ところが古代では、そうではなかったらしい。『万葉集』に五首詠まれる山橘は本種とされる。大伴家持は「この雪の消残る時にいざ行かな山橘の実の光るも見む」(巻十九ー四一二六)と、その趣を愛でる。名は薮柑子(やぶこうじ)で、小さい実を柑橘と見た。
『花おりおり その二』 湯浅浩史・著
庭の雪も溶け、久しぶりに庭を歩く。ヤマザクラの幹の下に、チラッと赤いものを発見する。何だろう?と振り返っても、どこにも「赤」はない。まさか、錯覚でもないだろうと、元の位置に戻って地面を眺めると、あった、あった。たった一粒の赤い実。母に訊くと「ヤブコウジ」だと教えてくれた。母は「野鳥が種を運んで来てあちこちに芽が出ているよ」とも。雪の下で健気に春を待っていたのであろう。
The comments to this entry are closed.
Comments