『職人 植村美千男のかばん修理工房』
名刺にはそう書いてある。シンプルで、堂々としていて、力強い。そして植村さんはその通りの人である。最近では最高の、そして感動の出会いであった。すごい人は、会っているだけでワクワクしてくる。植村さんは、豊岡で長年カバンの製造にたずさわってきた職人であり、経営者であった。今は、経営を息子さんに譲り、商店街の一角に修理工房を開いている。
植村さんは、「技術は墓場まで持っていけない。今のうちに若い者に鞄製造の技術を教え、伝承して行きたい」と冗談を交えながら、さらりとおっしゃる。地場産業だから、ある時はライバルともなる他の鞄会社の職人やスタッフにも分け隔てなく教える。実際に毎日、昼休みや終業後の夕方は、モノづくりに興味のある若者が植村さんを訪ねてくると言う。
植村さんに持ち込まれてくるカバンはさまざまである。上から2番目の写真のカバンは、ポニーの毛皮で作ったカバン。もともとは帽子入れだそうだ。革のカバン、柳行李のスーツケース、エルメスやグッチのカバン。上の写真のカバンは、元の姿をほとんど残していなかった革のカバンに、同じ年代物の革を合わせて、再生したカバン。
植村さんに持ち込まれる仕事は、修理だけではない。地元の鞄デザイン・コンクールで入賞した図面に基づき、実際にそれを製作してしまう。どんなものもでも形にしてしまうから凄い!場合に寄っては金具も手作りしてしまうらしい。また、自分用のカバンを自分でデザインして、植村さんに製作依頼する人もいるそうだ。まさに「世界に一つのマイ・バッグ」である。私もいつか頼んでみたい。
100年近く前のミシン。骨董品かと思ったら、今でも現役で使っているそうだ。植村工房には、古い道具、懐かしい道具、工具があちこちに散乱(?)している。このチラバリがまた何とも言えない。不思議な空間だ。
「パリ万博に出品したものだよ。」とさらりと言われる。え?!パリ万博って、エッフェル塔ができた時だからもう100年以上前でしょ?こんな逸品が何気なく積まれているのがまた凄い。
私もカバン大好き人間。家にはカバンがいっぱいある。取っ手や脚が壊れたもの、ちょっとしたところが使いにくいために実際に使っていないカバンもたくさんある。考えてみれば、それをカスタマイズしてしまえば良いのだ。それを実現してくれる植村さんとの出会いは、私のライフスタイルにも大きな影響を与えてくれる。
Recent Comments